僕の他にも10台程の車が車中泊している。
今夏の北海道はとても暑く、夜とはいえ車の窓を閉めていると眠れない程である。
かと言って、窓を開けると虫が入ってしまうので、
僕たちのような車旅人は車用の網戸を購入、または、自作し用意しているのです。
この夜も僕は、自作網戸を装着し、快適に眠りに落ちたのでした。
「チッチッチッチ・・・」
早朝、車外からの音で目覚める。
活字だけでみると、小鳥のさえずり? 虫達の歌声?など爽やかで希望に満ちた一日の始まりを想像するだろう。
だが現実音はそんな音じゃない。
これは経験した者にしか分からない、車のセルモーターがうんともすんとも微動だにしない音…。
希望どころか絶望に満ちた音なのである。
僕は思ったね。
8月にバッテリーあがるかねぇと…。
だが幸いにも、僕はブースターケーブルを持ち合わせている。
「しょうがねぇ、助けてやるか。」
僕は窓から様子を伺った。
20m程離れて函館ナンバーのドイツ車が停まっている。
「チッチッチッチッ」という絶望音に絶望した絶望顔の夫が降りてきた。
困惑顔の妻も降りてくる。
60歳を過ぎた辺りの夫婦である。
夫は車のトランクを開け、何やら物色を始めた。
「なんだ、ブースターケーブル持ってるのか。」
と思っていると、突然、妻が踊りだすではないか?!
両腕を大きく振り回し、バタバタと足踏みを始めたのだ!
驚いたがここは北海道…、これはアイヌ民族の伝統舞踊なのかもしれない。
美しい舞とは言えないが、アイヌの方々が毎朝行う儀式ではないのか?
僕は、驚きと感動の疑念の中を右往左往した。
そして…、
落胆した。
妻の頭上にミツバチがまとわりついただけだった…。
それを大げさにバタバタ、ブルンブルン!としたのだ。
逆効果である。
夫に「車に入っていろ!」と言われた妻は、何の役にも立たず
踊りながら車内に避難した。
頼りになる夫だと見ていると、なんて事はない。
彼も踊り出す始末。
ブースターケーブルも無い始末。
車内緊急避難の始末である。
さあ、どうする?
しばし車内で心拍数を落としたdance with honey bee 夫妻。
勇気を振り絞り、夫が再び車外へ。
そして、トランクへ。
やっぱり無い、ケーブル…。
そして、踊りながら車内へ…。
なんなのだ?
意地悪と思われるかもしれないが、この時点で僕の助けてやろうという気持ちはキレイに消えている。
関わりたくないのだ。
きっと彼らとのやり取りが面倒臭いと思うのだ。
そもそも、何故8月にバッテリーがあがったのか考えてみよう。
昨夜も暑かったのはご存じの通り。
僕を含め、他の車は自作網戸で対応したのもご存じ。
だが、ハニービー夫妻はそんな物持ち合わせていなかった。
僕が思う昨夜のドイツ車内はこうだ。
夫:う〜ん…。暑くて眠れん…。
妻:・・・。(眠れている)
夫:暑くないか?
妻:・・・。(暑くない)
夫:少しだけ、エアコンいれるか。
そうして、少しだけのつもりなのでエンジンを掛けずにエアコンをON!
涼しく快適になり、そのまま入眠…。
誰にも気づかれず、息絶えるバッテリー…。
おそらく、これで間違いないだろう。
普通なら故障や接触不良を疑う状況だと思うが、そういう素振りはなく
トランクを開け踊っていたからね。
遠目にはいつまでも見ていたいが、直接関わるのは嫌ですよ。
でもね、向こうから「お兄ちゃん、助けて。」「I need helpですの。」と言われればね。
助けますよ。
だからね。こっちに来ないでね。
そんな思いで、観察を続ける。
妻が降車。
高まる緊張…。
化粧ポーチを抱え、お手洗いへ…。
安堵とお気軽妻への苛立ちが交錯。
夫、降車。
高まる心拍数…。
カメラ片手に展望所へ…。
安堵と能天気夫への怒りが交錯…。
助けを求めなさいよ!
僕だけじゃない!
あなたの周りには沢山の人がいるじゃないか!
だが、彼らは助けを求めない。
記念撮影を終えた夫は携帯電話を取り出し、金での解決を選んだのだ。
1時間経過。業者はまだ来ない。
陽が高くなり、気温も上昇している。
夫婦は、もはや鉄屑と化したドイツ車内にはいない。
窓の開かない車内は暑いのだ。
売店のベンチで仲良く並んで腰かけるハニービー夫妻。
おそらく、彼らのようになりたいと思う人はいない。
僕はヒグマに出会っても「ヒェ〜」とか絶対言わない。
その時点で負けですからね。
だが彼らは言っていたね。
ちっちゃな虫相手に「ヒェ〜ヒェ〜」と言いながら踊っていましたよ。
かっこ悪いですよ。
でもね。
あの2人は幸せそうですよ。
計画と準備を練りもせず、家の布団を車に積み込み、道内旅行をする。
ドイツ車じゃなければ、夜逃げを疑う旅スタイル。
8月にバッテリーをあげ、夫婦揃ってミツバチとダンス&ダンス!
そんな彼らは、今回の危機もすぐに笑い話にするだろう。
否、すぐに忘れてしまうかもしれない。
否、否、もしかしたら、同じ過ちを繰り返しているのかもしれない。
でも、あの楽観的・楽天的な姿勢には見習う点があるのも確かなのだ。
僕の予想が正しいのなら、妻が夫に叱責するのが一般的だ。
でも、妻も踊っていたね。
おそらく、夫のミスに気付いていないだけなんだけど、それはそれでベストバランス!
人間、問題に直面すると悲観的になりがちだが、時には、彼らのように問題を直視しない、問題に気付かないというのも良いのかもしれない。
だが、問題と向き合わない限り、本質的な解決にはなりません。
同じような問題を繰り返すのです。
だから、彼らにも学んで欲しい。
今度は助けを求めてください。
「 Yes! I need help! 」 と叫びなさい!
僕だけじゃない、みんなが助けてくれます。
世の中にはあなた達が思っている以上に、親切な人達がいるのですから。

前から、記しておこうと思っていた事についてです。
それは、頭内爆発音症候群というやつ。
症候群というだけあって、病ではないのですが
ややこしいのでここでは病として記します。
さて、どんな病かというと
もうそのまんま、頭の中で「バ〜ンッ!」だの「ガッシャ〜ン!」だのと爆発音が響き渡る病です。
実は、僕も何年も前からこの症状があります。
爆発が起こるのは100%寝入り時の意識が有るか無いかの狭間の時。
意識が遠のくええ感じの時に「バ〜ンッ!」と威勢よく起こされるのです。
頭内と言われても漠然としていて分かり辛いと思いますが、
現実に音がしているのと判別が出来ないレベルの音がします。
最初の頃(たぶん10代の頃)は驚きましたが、最近は誰にでもある事なのだと思ってました。
しかし、最近になって稀な病だという事を知り、興奮気味なのです。
とりあえず、直接健康に影響はないそうなのですが、
中には睡眠障害に陥ってしまう方もいるようです。
僕の場合は月に2回程度の頻度なので、生活にも悪影響はありません。
でも毎晩だの一晩に何度もとなると睡眠障害に陥るのも頷けますね。
あなたは、爆発音しませんか?





